2012年6月12日

子どもの事故(傷害)を防ぐためには


週末は日本プライマリ・ケア連合学会の春季生涯教育セミナーに参加しました。
春季セミナーには様々なワークショップやレクチャーがあるんですが、そのうち2つを受講しました。

今日はそのうちのひとつをご紹介します。
小児科医の山中龍宏先生による『子供の事故を防ぐ知恵と子育て支援』に参加しました。

山中先生は、長年、子どもの事故(傷害)予防の活動に取り組まれ、日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会の委員長もされています。

日本を含め先進国の118才の死亡原因の第1位をご存知でしょうか?
病気と思われるかも知れませんが、それは「不慮の事故」とのことでした。
(※平成21年の日本の14歳、1014歳では第2位のようです。http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii09/deth8.html 

ワクチンのよる病気の予防ももちろん大切ですが、事故予防もとても大切なことがわかると思います。

事故(accident)というと「防ぎようのない」というニュアンスが含まれるため、「防ぎ得るのに起きてしまった」というニュアンスを持たせて、現在海外ではinjuryという言葉を用いているそうです。
山中先生は、このinjuryを「傷害」と訳されています。

海外でも、日本でも子どもの年齢に応じて、よく起こる事故(傷害)はわかっていて、海外では食品や生活器具・玩具による事故(傷害)を監視する機関があり、メーカーへのリコールを命じることもあるそうです。

今回のセミナーは、ベビーカーの金具に指が挟まれた赤ちゃんの事例が取り上げられました。米国でも同様の事例があり、対象ベビーカーはリコールされたそうですが、日本の消費者庁は注意のみでリコールには至りませんでした。
(参考:「ベビーカーによる指先の切断」http://www.jpeds.or.jp/alert/pdf/0026.pdf

このような事故(傷害)を繰り返さないためには、現場で親に注意を促すだけでは不十分で、根本的な原因を改善しなくてはなりません。責任の追求ではなく、原因の追求が必要です。

そのために山中先生は、工学系の技術者にも協力してもらい事故(傷害)を起こした器具の構造なども検討し原因と、その改善点を探るとのことでした。
また、そのような構造上の不備が明らかになることによって、事故の予防になることはもちろん、事故(傷害)にあった子どもの親御さんの「自分たちが事故を起こしてしまった」という精神的な負担を軽くすることにもつながります。

また、山中先生は日本小児科学会のホームページに「Injury Alert(傷害注意速報)」のコーナーを作られ、同じ事故(傷害)が繰り返されないために、各事例について詳しく解説されています。

小児の診療に関わる医療関係者のみならず、ぜひ一般の方にも見ていただければと思います。

URLはこちらです
事故(傷害)予防のためには、まず現場の医療機関からの情報提供(サーベイランス)が必要です。
(これはワクチンについても同様で、対象疾患のサーベイランスが大切です)

基本的にはInjury Alertへの情報提供は小児科学会会員からのものですが、日本プライマリ・ケア連合学会会員の医師からの情報提供があれば、小児科学会事務局まで連絡をくださいとのことでした。

以下もご参照ください。

子供の安全ネットワーク・ジャパン
http://safekids.ne.jp/

提言:「事故による子どもの傷害」の予防体制を構築するために
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-t62-9.pdf


病気も事故(傷害)も、あらかじめリスクがわかっているものは出来るだけ予防して、子どもたちの成長をサポートできればと思います。
ワクチン問題と同じで、本当は国によるしっかりとした対策が必須ですが、まずは現場ひとりひとりの取り組みが大事です。
(総合内科部門 坂西雄太)

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