2011年1月26日

ピッツバーグ大学の家庭医&総合内科医による講演会。のご報告


昨日は佐賀大学病院卒後臨床研修センターで『ピッツバーグ大学メディカルセンター(UPMC)の家庭医と総合内科医による講演会』を行いました(卒後臨床研修センター、総合診療部、地域医療支援学講座、飯塚病院総合診療部との共催)。

医学生23名、初期研修医3名、医師10名の参加がありました。
学生のうち5名は熊本大学医学部の学生さんたちで授業が終わったあとに佐賀まで来てくれました!

飯塚病院総合診療部の井村先生、大杉先生、野口先生(通訳)とともにUPMC家庭医のジャネット・サウスポール先生、総合内科医のマイケル・ラム先生にお越しいただきました。

Janntte South-Paul先生はUPMCで家庭医療部の部長もされています。
米国における家庭医の歴史や日米における家庭医の役割について主にお話されました。

米国で家庭医になるためには3年間の研修後に試験を受け、資格を取得後も7年ごとの更新が必要になります。
家庭医は米国で40年前に生まれた概念とのことでしたが、長い道のりを経て近年は米国社会でもその必要性が注目されています。

昨年2010年にはThe Patient Protection and Affordable Care Act (PPACA)という法律が制定され、そのなかでプライマリケアの発展が重視され、Patient-Centered Medical Home(PCMH)がつくられるようになったそうです。
PCMHは地域の住民が登録し、家庭医がかかりつけ医になることで長年にわたって診療しまた個人の医療情報が管理され、専門医や急な入院時なども医療情報を共有し一環したケアを提供するというシステムです。
緊急入院時には、かかりつけ医に自動的にメールが送信され、情報提供がスムースに行なわれます。また情報共有のために、地域での各施設の電子カルテの統合も進めているそうです。
PCMHはビジネス中心ではなく、あくまで患者中心の医療ということを強調されていました。
PCMHによって患者さんの安心が増し、医療の質の向上や医療費低下などのエビデンスもすでにあるそうです。

医療費の高い米国ではますます重要になりますし、家庭医の待遇改善も行なわれるだろうとのことです。
日本はどんどん社会の高齢化が進みますので、合併症を多くかかえる高齢者の医療を支えるためには家庭医、総合医がもっともっと必要です。

『良い医療を提供したかったら、家庭医になってください!』というサウスポール先生の言葉が印象的でした。


Michael Lamb先生は、実はサウスポール先生と同級生とのことで、現在は開業しつつ20年にわたってピッツバーグ大学での教育にも従事されています。

今回は「肺炎の身体所見のとりかた」についてのレクチャーでした。近年は、米国でも診察が軽視されすぐ検査に走ってしまう傾向があるとのことでした。
聴診所見のみならず、視診、触診、打診についても解説していただきました。

肺炎患者のうち1030%は胸部レントゲン所見が正常であるにも関わらず、身体所見は陽性とのことでした。
つまり、レントゲンだけに頼っていると13割の肺炎患者を見落とす危険性があるわけです。
もちろん胸部CTを行なえば見落としは減るわけですが、患者の被ばく量や医療費が問題となります。

聴診については肺炎のタイプ別の肺雑音やE to A changesegophony、やぎ声;患者さんにE:イーと言ってもらいA:アーと聴診と聞こえたらconsolidationあり)などの解説があり、触診では触感震盪音(音声伝導、tactile fremitus)などの解説がありました。
また検査所見よりも、患者さんの状態(身体所見とバイタルサイン)によって予後が予測されるというお話がありました。

米国と比べ極端な肥満患者さんが少ない日本人の方が身体所見がとりやすいという言葉も印象的でした。
身体所見をきちんととることは、正しい診断へつながり、検査に伴う患者さんへの侵襲を減らし、医療費も減らすことができます。みんなでマスターしましょー

1/29(土)にも飯塚病院でUPMCの先生たちのレクチャーは公開レクチャーがあるそうです。
http://aih-net.com/medical/recruit/UPMC/boshuu.shtml


今後も飯塚病院・総合診療部の先生方とも講演会や勉強会を一緒に企画させていただこうと思っています。

「佐賀は飯塚からも長崎からも近いし皆で佐賀に集まってプライマリケア、家庭医、総合診療を盛り上げましょう」とさらにお互いの絆を深めました(笑)。
よーし、盛り上げるぞ!!

UPMCおよび飯塚病院の皆さん、ありがとうございました!
(総合内科部門 坂西雄太)

 

2011年1月19日

新任のご挨拶

はじめまして。
今年2011年1月1日より佐賀大学医学部地域医療支援学講座に赴任させていただきました蘆田(あしだ)です。
総合内科部門を杉岡先生、坂西先生とともに担当させていただき佐賀県の医療に貢献できればと考えております。
宜しくお願いいたします。

また、佐賀県では現在のところ内分泌・糖尿病科の専門医が比較的少なく、専門医の育成とともに総合内科医の先生と協力しながらの医療体制の確立、強化が望まれております。
この方面でも何かお役に立てることがあればと考えています。

現在、鳥栖近郊に住んでおり毎日おもに車で通勤しておりますが、自宅付近の雨の多さに比較して佐賀の天気の良さに感動を覚えています。毎日、晴れ晴れとした気持ちで仕事ができることに感謝しております。
また、現在のところまだ佐賀県の南東部をうろうろしているのですが、佐賀県も広く大きいことを改めて実感しているところで、これから西へ北へ足を伸ばしていこうと計画しています。

これから精一杯頑張っていきますので、どうぞ宜しくお願いいたします。

佐賀大学医学部 地域医療支援学講座 総合内科部門

蘆田 健二

2011年1月12日

ピッツバーグ大学の家庭医&総合医による講演会のお知らせ

佐賀市内ではインフルエンザが流行中ですが、みなさまは大丈夫でしょうか? 僕はインフルエンザの患者さんを診察させていただく度に、ワクチンの大事さをさりげなく囁いています。

さて、講演会のお知らせです。

当講座でも交流させていただいている飯塚病院ではピッツバーグ大学メディカルセンター(UPMC)の医師による訪問指導が定期的に行なわれています。
UPMCは米国ペンシルベニア州最大の総合医療センターで、米国有数の非営利医療機関です。

毎回の院外向けの公開セッション以外にも、「家庭医」という専門職について知って頂くこと、交流を通じて家庭医療のネットワークを強化することなどを目的として大学や他院での講演を企画されています。

今回は当院にお話しをいただき、飯塚病院と佐賀大学病院・卒後臨床研修センター、総合診療部、地域医療支援学講座の共催で「ピッツバーグ大学メディカルセンター家庭医&総合医による講演会」を下記の日程で行います。


『ピッツバーグ大学メディカルセンター 家庭医&総合医による講演会』

日時 1月25日(火)18:00~20:00
場所 佐賀大学病院 卒後臨床研修センター1Fセミナー室


講演内容 (通訳あり)

ジャネット・サウスポール先生 (家庭医、UPMC家庭医療部部長)

"Family Medicine in Japan and the US - Improving the Health of the Community"

マイケル・ラム先生 (総合内科医、内科臨床教授)      

"Physical Examination in Patients with Pneumonia - Useless Ritual or Lost Art?"


サウスポール先生には「日本と米国の家庭医療」、ラム先生には「肺炎の身体所見のとりかた」についてご講演いただきます。
対象は学生、研修医を主としていますが、それ以外の方も参加していただけます。
飯塚病院より通訳の先生も来られますので、日本語での質問もOKです。

事前の申し込みや参加費などはありません。
なかなかない良い機会ですので、ぜひ多くの方に参加していただきたいとおもいます!

(総合内科 坂西雄太)

2011年1月7日

『国連ではたらく先輩から学ぼう!』講演会 盛況でした!

1月5日に『国連ではたらく先輩から学ぼう!』講演会を佐賀大学病院・卒後臨床研修センター、総合診療部、国際医療研究会(学生サークル、顧問:地域・国際保健看護学 新地浩一先生)と地域医療支援学講座の共催で行いました。


講師は平成13年度佐賀医科大学卒業の江副聡先生です。


江副先生は、初期研修後に医系技官として厚生労働省に入省し、その後ハーバード大学大学院で公衆衛生と行政学を学び、現在は厚労省よりUNAIDS(Joint United Nations Programme on HIV/AIDS、国連エイズ行動計画)に出向されています。

当日は佐賀大学の医学生、看護学生、研修医を中心に多くの参加がありました。
九州大学医学科5年生や佐賀新聞社の記者さんにも参加していただきました。

江副先生がUNAIDSでされている仕事の一つは、様々なHIV/AIDSの援助団体、研究機関同士のネットワークづくりや調整があります。
エビデンスに基づいたデータ収集と同時に、もろに人間対人間の交渉もあり、まさにサイエンスとアートが融合したお仕事だと感じました。

現在のUNAIDSの仕事、HIV/AIDSの世界的な状況のこと以外にもこれまで関わられた医療安全や診療報酬、メンタルヘルスについて、今後の日本の超高齢化社会について、国連ではたらく日本人の少なさについて、国際保健協力での日本のプレゼンスの低下、また「人事交流」として臨床医が2年間限定で医系技官として働く方法もあるとのお話も聞けました。

「医療政策はあくまで目的のための手段であること」
「臨床医が聴診器や検査をツールとして使うように、医系技官は資金・人材・ルールをツールとして活用すること」
「新たな問題に対処するには、問題を抱える人たち自身が当事者・リーダーであるべきだというリーダーシップ論」

ということもとくに印象的でした。

残念ながら時間の関係で質疑応答を途中で打ち切らなければならないほど、学生さんたちも熱心に質問していました。

とても勉強になると同時に、同期の江副さんの活躍に僕も刺激をもらいました。

これからもThink Global,Act Localで頑張ります!

(総合内科 坂西雄太)

2011年1月4日

年頭所感

皆様、あけましておめでとうございます。

昨年4月に立ちあがった当講座も早いもので新年を迎えることになりました。
初めはゼロからのスタートで何かと悪戦苦闘することも多かったですが周りの方々に支えられながら無事業務をこなすことができました。
心から感謝の意を述べたいと思います。

さて当講座の目標はその名の通り地域医療の支援ですが、一言に「地域医療」といっても立場によってその言葉の意味するところは変わってきます。
当講座としては「地域医療の支援=地域で必要とされる医師の育成」という立場をとっています。

総合内科医、小児・救急医、その他の不足している診療科の医師、はそれぞれ地域で必要とされている医師であり、そういった医師を育成して地域で活躍してもらうための土台作りがこの講座期間内で果たすべきミッションと考えています。

新たな年を迎えた今、スタッフ一丸となってこのミッションを果たしていこうと、寒空の下で身を引き締めているところです。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

(地域医療支援学講座教授 杉岡隆)