こんにちは!
最近、全国で風疹が流行していますので、今日はこのことについてお話します。
風疹(ふうしん)って聞いたことはあると思います。俗にいう「三日はしか」ですね(ちなみに「はしか」は麻しんのことです)。
風しんは、風しんウイルスによって、急な発熱と発疹、耳の後ろや首のリンパ節の腫れを起こす病気です。発熱はふつうは3〜4日間ですが、熱がでないこともあります。
以前から風しんワクチンを2回接種していた欧米とは異なり、日本ではいまでも風しんが流行することがあります。風しんにかかる年齢は生後12ヶ月ころからで、流行は春先から初夏にかけてが多いです。
で、いま全国では風しんが流行している地域があります。
少し前(2012年6月11日〜6月17日)のデータですが、以下のようになっています。
風しん53例(検査診断例42例、臨床診断例11例)
感染地域:兵庫県14例、大阪府10例、東京都5例、三重県3例、千葉県2例、福岡県2例、群馬県1例、埼玉県1例、新潟 県1例、京都府1例、奈良県1例、国内(都道府県不明) 12例
年齢群:1歳(1例)、4歳(1例)、15〜19歳(9例)、20〜24歳(4例)、 25〜29歳(7例)、30〜34歳(15例)、35〜39歳(3例)、40 代(10例)、50代(3例)
2012年の風しんの累積報告数:393例(検査診断例270例、臨床診断例123例)
風しんは、ここ5年間のなかで今年が最も多く(すでに昨年1年間の累計数を超えています)、さらなる流行の危険があります。
現時点では、風しんに感染したのは、20代以上の男性が報告数全体の63%を占めています。(麻しんは昨年より報告数は少ないものの、今年の麻しん患者の45%は成人です!)
おとなりの福岡県でも報告例がありますので、佐賀でも十分な注意が必要です。
風しんウイルスは患者さんの唾液のしぶき(飛まつ)などによって他のひとにうつります。発疹のでる数日前から発疹がでたあと5日間くらいは感染力があります。
風しんの症状は子どもだと比較的軽いですが、まれに脳炎や血小板減少性紫斑病などの合併症が2000〜5000人に一人くらいの割合で発生するので、決して軽くみることはできないと思います。
また大人がかかると、子どもの場合より症状や期間が長くなることがあり、1週間以上仕事を休まなければなることもあります。
さらに(ここからがとくに大事です)風しんウイルスに対して免疫のない女性(風しんワクチンを2回していないか、しても抗体が下がっている場合、風しんにかかったことがない・または不明な場合も)が、妊娠初期に風しんにかかるとおなかの赤ちゃん(胎児)も風しんウイルスに感染し、難聴や白内障、心臓病そして精神や体の発達の遅れなどの障がいをもった赤ちゃんが生まれる可能性があります。これらの障がいを「先天性風しん症候群」といいます。
先天性風しん症候群をもった赤ちゃんがこれらすべての障がいをもつとは限りませんし、先天性風しん症候群がおこる可能性は妊婦さんが風しんにかかった妊娠時期により変わります。とくに妊娠初期の妊娠12週までにその可能性がありますが、調査によって25〜90%と幅があるそうです。ですので、妊娠初期の風しんの感染が疑われた場合は、まずはかかりつけの産科の先生に必ず相談をしてください。
この先天性風しん症候群を予防するためには、妊娠していない時期に女性が風しんワクチンをすること、妊婦さんやこれから妊娠する可能性のある女性のパートナー(夫、お父さん、彼氏さん)も風しんワクチンをしておくことが大切です。
2011年にも国内で風しんの流行があり、数例の先天性風しん症候群が報告されています。
2005年度(平成17年度)までは生後12ヶ月から90ヶ月未満に風しんワクチンは1回のみ定期接種されていましたが、2006年度(平成18年度)からは麻しんとともに2回接種制度が導入され、風しんワクチンは、「麻しん・風しんワクチン(MRワクチン)」として、1歳と小学校入学の前年(年長さん)で2回接種することになっています。
また、2007年から始まった麻しんの大流行をうけ、2008年度から今年度(2012年度)までは中学1年生になる学年と高校3年生になる学年のひとも2回目の接種を、定期接種として受けることができますので、該当する子どもさんたちは絶対にうけてほしいと思います。
ちなみに、1歳になったらこのMRワクチンとともに水痘(みずぼうそう)ワクチンやおたふくかぜワクチン(これからは任意ワクチンです)もすぐに接種するのがおすすめです(同時接種もできます。水痘、おたふくかぜワクチンについてはまた次の機会に)。
ワクチンの導入時期や導入後の移行期の影響で、30代以上の男性は風しんワクチンを1回もうったことがない方がほとんどだと思います。
平成23年度の調査では、20代男性の10人にひとり(10%)、30代〜50代前半の男性の5人にひとり(20%)は風しんの免疫を持っていなかったそうです。
くりかえしますが、今年の風しん患者さんの63%が20代以上の男性です。
ですので、若いお父さんに限らず、若いおじいちゃん(?)も、もっと言うと周りに妊娠可能な女性がいる20代以上の男性で風しんに対する免疫がない(または不明)な方は、自分自身を守る意味と、お腹の赤ちゃんを先天性風しん症候群から守るためにも風しんワクチン(麻しん・風しんワクチン:MRワクチン)を接種することをおすすめします。
この場合は、定期接種ではないのでお金はかかりますが、それだけの、それ以上の価値があると思います。
(風しん単独ワクチンもありますが、麻しんの対策も大事なので、麻しん・風しん混合ワクチン:MRワクチンがおすすめです。おとなの場合、MRワクチンは任意接種となるため、接種料金は医療機関によって異なりますが、概ね1万円のようです)
また風しんに対する免疫があるかないか(抗体が下がっていないか)は、病院の血液検査でわかりますが、たとえ抗体が下がっていなくてもワクチンをするにこしたことはなく(ワクチンをすることでさらに免疫が強化する効果が期待されますし、またすでに免疫があっても再度のワクチン接種で特別な副反応がおこることもありません)、血液検査や病院受診にもお金がかかりますので、検査なしでワクチンをしてもかまわないと思います。
個人的なことですが、僕(30代男性)も結婚してすぐに、抗体検査なしで麻しん・風しんワクチンをしています。
麻しん・風しんワクチンは、生ワクチンのため妊娠中の女性は接種することができず、妊娠していない女性は接種後1〜2ヶ月は避妊が必要です。
なので、すでに妊娠中に周囲で麻しんや風しんが流行した場合には、旦那さんや周りの家族が麻しん・風しんワクチンをして、妊婦さんに感染させないことが大事だと思います。
大人の麻しん・風しんワクチンの予防接種をどこでうけたらいいかについては、お近くの小児科、内科医院や保健所にお問い合わせください。
必要なワクチンはきちんと接種して、赤ちゃんや家族を守りたいですね。
(総合内科部門 坂西雄太)
参考
VPDを知って子どもを守ろう。ホームページ
風しん
国立感染症研究所ホームページ
風疹とは
風疹Q&A(2012年改定)
国立感染症研究所 感染症動向調査2012年第24週