2012年9月12日

第3回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会のワクチン教育講演


912日に博多で開催された第3回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会では、実行委員としてワクチンの教育講演を企画・担当させていただきました。

昨年の第2回学術大会では、一般公募シンポジウムとしてワクチン関するシンポジウムを企画して、今年は九州で開催ということで大会実行委員をさせていただく機会をいただいて、偶然ですが2年連続でワクチンに関する企画に携わることができました。

今回は、川崎医科大学・小児科教授で、わが国のワクチン行政にも深く関わっておられる中野貴司先生に講師をお願いし、座長には本学会ワクチンに関するワーキンググループ前期リーダーで亀田ファミリークリニック館山の院長(先日のNHK ドクターGでもおなじみの)岡田唯男先生に務めていただきました。

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名収容の会場は満席で、参加者の関心の高さが伺えました。

中野先生には、講演時間が60分という短い時間にも関わらず、種々のワクチンについて大事なポイントをわかりやすく凝縮してお話していただきました。

ここで、その全てをお伝えすることはできませんが、主に以下についてお話いただきました。

日本のワクチン行政は世界と比べ1020年のギャップ(ワクチンギャップ)があるが、ここ5年で日本でも多くのワクチンが導入され、20年のギャップが少しずつ埋まってきたが、海外にある5〜6種の混合ワクチンが日本にはまだない。

ワクチンの「最適な接種時期とは?」→接種可能な月齢に達したらすぐに!

百日咳:成人は典型的な症状がないことが多い、低月齢乳児の重症化が問題
6ヶ月未満児も非定型的なことがあり、重症化しやすい)

ヒブや肺炎球菌の感染症は、生後6ヶ月ころから多く、生後2ヶ月からのワクチン接種開始が大事

ロタウイルス(嘔吐下痢症):日本でも入院3万人/年(5歳までの入院リスク 1/40人)、日本では死亡することは1020/年ほどと少ないが、外来受診は25万人/年と推計されている。衛生状態の向上だけではロタウイルス感染の抑制にはならない。

生後6ヶ月までに必要なワクチンの接種回数は1819回になる。同時接種の利点のひとつは、基礎疾患を有する子どもさんが体調の良いときを見計らって同意接種することによって必要なワクチンの接種完了までの期間を早めることができ、感染のリスクを減らすことができる。

MR(麻疹・風疹)ワクチン:34期(中学1年と高校3年になる学年の接種)の接種は今年度まで終了の予定だが、その接種率は高くないため、該当する学年で2回目の接種を終えていない子どもたちは早めの接種が必要。

麻疹、風疹は2008年から全数把握対象疾患になっているため、診断した医師は保健所に報告が必要。
(厚労省からのお知らせ
坂西追加)

風疹:現在、2030代男性を中心に現在流行している。妊娠初期に風疹に感染すると先天性風疹症候群のリスクがあり、妊婦さんの家族で風疹ワクチンをしていなかったり、風疹にかかったことがない方は麻疹・風疹ワクチンを。 

最後に9月から定期接種となった不活化ポリオワクチンの接種方法などについて解説をしていただきました。11月からは3種混合ワクチン(DPT)と不活化ポリオワクチンがひとつになった4種混合ワクチンが導入される予定ですが、3種混合ワクチンに含まれる百日咳は乳児が感染すると重症化することがあるため、該当する接種月齢の赤ちゃんは11月まで待たずに不活化ポリオワクチン+3種混合ワクチンを開始すべきということを強調されていました。

最後に会場の参加者より質疑応答がありました。

講演のなかで中野先生も言われていたように、1020年のワクチンギャップのなかで一般の方のみならず、僕たち医療者の間でも最新のワクチンの知識・認識にはまだまだばらつきがあるように思います。

小児科医や産科医とともにプライマリ・ケア医もワクチンのことを勉強し続けたいと思いました。

(総合内科部門 坂西雄太)

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