ざっくばらん家庭医療勉強会は、学生団体の九州家庭医療ネットワークが主体となり、様々な医療機関の医師もサポーターとして参加しています。
今回は、長崎大学病院へき地病院再生支援・教育機構の先生方が主催され、家庭医療、プライマリ・ケアに役立ついろんなレクチャーがありました。以下、かんたんにその内容をご紹介します。
『診療所で使える捻挫や骨折の処置』
(宮本俊之先生(長崎大学病院整形外科)
(宮本俊之先生(長崎大学病院整形外科)
足の捻挫についてのレクチャーのあと、実際にRICE(Rest, Icing, Compression, Elevation)をしてみようということでIcingの実習がありました。いままでIcingの重要性はわかっているつもりでしたが、具体的な冷却法を教えていただいたのは初めてだったので、とてもためになりました。また早めに整形外科医に紹介すべき所見も教えていただきました。
『ハンマーを使わない神経診察』
(中桶了太先生 長崎大学病院へき地病院再生支援・教育機構)
(中桶了太先生 長崎大学病院へき地病院再生支援・教育機構)
病歴だけで、神経疾患の60-70%が診断可能だということで、神経疾患の鑑別に役立つ問診や診察のポイントを教えていただきました。また、高齢者の診察では「難聴」のため医師の指示どおりにできないこともあるので注意とのことでした。
『離島医療』
(有吉靖先生 佐賀医大OB)
長崎の離島である宇久島(人口2800人、佐世保まで船で2時間半)の診療所(佐世保市立総合病院宇久診療所)で医師をされている有吉先生のお話でした。
有吉先生は佐賀大学医学部(当時の佐賀医科大学)の大先輩で、卒業後から離島医療をするために、まず6年間の研修をされた後に離島に移られ、さらに卒後13年目より6年間、再度研修(形成外科、産婦人科なども)され、現在に至るというすごい先生でした。
また宇久島では保健師さんと連携し、予防接種にも力を入れているとのことでした。有吉先生の宇久島への愛情や「離島だからできること」「3日先の波風まで把握している」という言葉も印象的でした。
『在宅医療はどこまでやれるのか(終の棲家を求めて)』
(松尾誠司先生 長崎宝在宅医療クリニック)
(松尾誠司先生 長崎宝在宅医療クリニック)
基本的には医師は1名で24時間対応され、年間に80名ほどの方々を在宅でお看取りされており、めちゃめちゃ気合いが入った先生でした。
もちろん訪問看護師さんの働きも大きく、訪問薬剤師との連携も取っておられます。また家族のグリーフケアもされています。「在宅の看取りを通して、家族がまとまる」という言葉から患者さん本人だけでなく、ご家族の歴史や想いまでも含めたケアをされていることが印象的でした。また在宅医療の現場でも「仲間づくり」の大切を訴えておられました。
『症例検討会1』
(江口幸士郎先生 唐津市民病院きたはた)
症例をとおして「高齢者虐待」の問題をとりあげられました。虐待を疑った場合の対処の仕方や「介入の主眼は処罰ではなく、あくまで支援」というが印象的でした。
『症例検討会2』
(吉田伸先生 飯塚・頴田家庭医療プログラム後期研修医)
「クイズでケース 膝痛の診療」ということで、膝痛の患者さんの症例をもとに膝の診察のポイントを教えていただきました。
症例検討会では参加者が各自のケータイから、回答する形式で瞬時にどの解答を選らんだという選択率がわかるシステムで、楽しみながら症例検討に参加することができました。
『PCAT報告』
症例検討1をされた江口先生、飯塚病院の茂木先生と僕の3人で合同報告をしました。
たまたま3人それぞれが5月下旬から6月上旬にかけて、日本プライマリ・ケア連合学会の東日本大震災支援プロジェクト(PCAT)で石巻に行ってきました。
同じ石巻ではあったのですが、それぞれ担当業務が違ったので、江口先生が「福祉的避難所(遊学館)について」、茂木先生が「在宅診療支援について」、僕が「医療的避難所(ショートステイベース、SSB)」についての報告をしました。
僕らの報告を聞いて、その後、長崎大学医学部の5年生がPCAT参加を申し込んでくれたとのことでした。
西日本の僕らも何らかの形で東北の震災支援を続けていきたいと思います。
勉強会終了後には、場所を移して恒例の懇親会がありました。参加された医師や他大学の学生さんとのお話ができて楽しかったです!
今回もいろいろな施設の先生方のお話を聞くことができ、また学生さんの参加も多く、今回は宮崎大学からの参加もあり、プライマリ・ケアのネットワークがだんだん広がってきています。
『オール九州』を目指して、これからも施設を超えた交流を続けていきたいと思います。
(総合内科部門 坂西雄太)