佐賀大学医学科6年生には実習のひとつとして『地域医療実習』があります。
これは必修の実習で、2週間のうち、1週間ずつを佐賀県内(おもに佐賀市内)の診療所と地域の中核病院で実習し、「地域医療の現場」を体感してしてもらうのが目的です。
前年度までは総合診療部が担当され、今年度より当講座が担当しています。
毎年、佐賀県内の診療所・病院の先生方や看護師、理学療法士をはじめとしたメディカルスタッフの方々にお世話になっています。
10名ほどのグループで実習があり、基本的には各施設に1名ずつで実習を指導してもらっています。
金曜午後に大学に戻ってきてもらい、それぞれの体験・学びを共有するために学生が司会・書記役を行い、ひとりずつ1週間の気づきを発表しディスカッションを行います。
なるべく先入観を持たずに現場を感じてもらうため、実習の初日にはあえて僕らからは地域医療についての詳しい話はせずに、1週目の金曜日に中間まとめとして地域医療の概論を15分ほどお話しています。
でも、さすがは佐賀大学の6年生で、みんな、きちんと地域医療の見るべきポイントを見てきてくれています。
たとえば
地域医療では医師と患者の距離がより近く、患者さんのお話をより長くきことが出来(施設によっては大学病院の外来よりも忙しいが)、患者や家族の信頼が厚いこと。
地域ではたとえ、その先生がもともとの専門があっても、その専門科に限らないさまざまな患者さんのニーズがあり、医師は幅広く、そのニーズに応えなければならないこと。
医師、看護師だけでなく、様々なメディカルスタッフやケアマネージャーなど他職種で地域医療を支えていること。
などなどです。
どうしても日本の医学部の実習や研修医の初期研修は、大学病院や総合病院がメインになってしまうのですが、日本の医療現場はそういった病院だけでは当然なく、様々な医療現場や地域で患者や病気の背景は異なり、患者さんや住民のニーズはそれぞれ違います。
その事を頭で理解はしていても、いつの間にか、学生や研修医にとっての医師、患者像、医療に対するイメージのスタンダードが大学病院などの高度専門機関でのそれになってしまいます。
確かにそういった高度医療機関は大切なんですが、医療のイメージがそこだけに偏ってしまうと「日本の医療の全体像」が見えなくなり(あるいは全体像に気が付くのが働きだしてからかなり経ってからになり)医師の偏在や進む科の偏の原因になるのかも知れません。
僕がよく学生さんに話すのは「大学病院の医者を見てごらん。40代-50代のおじさんやおばさんの医者ってそんなにいないやろ?つまりその年代の医者は科に限らず、地域で働いているんだよ。」ってことです。
(まあ、40代がおじさんやおばさんかという議論はここではしないでおきましょう。 例え話ですので)
将来に進む科がなんであれ、長い医者人生では多かれ少なかれ地域の現場で働く機会があります。
また総合病院で働いていても、患者さんの入院前後の地域での医療の係わり方や地域での生活がどのように支えられていることをきちんと理解しておくことは、目の前の患者さんのマネジメントにもつながり、患者さんにより良い医療・ケアを提供できることになると思うのです。
ほんとはもう少し早い時期にも一度、地域医療の実習があった方がいいなと思います。
受け入れ施設の皆様、ありがとうございました!
後日に6年生のディスカッションやレポートから、各施設にもフィードバックをさせていただこうと思っております。
6年生は今日で他の実習も終わりだそうで、これからは国試勉強に集中ですね。
お勉強と学生最後の夏休みを謳歌してね~
(総合内科部門 坂西雄太)
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