2010年12月20日

ざっくばらん家庭医療勉強会 in 佐賀 大盛況でした!

昨日は、第3回ざっくばらん家庭医療勉強会を佐賀で開催しました。

年の瀬もせまり、今回は参加者が少なくてもこんじまりとしよう。と、思っていましたが
予想をはるかに超える学生さん17名、医師18名と多くのみなさんに参加していただきました。

今回は4つのセッションを行いました。
1つ目が本講座教授の杉岡先生による『家庭医のための臨床疫学(EBM)入門』。

もともとの「臨床疫学」という言葉では世間にあまり流行らず(?)「EBM:Evidence Based Medicine」という言葉が発明されてから、一気に世間に広まったとのこと。ネーミングって大事ですね。

『臨床疫学とは、あくまで日常の臨床行為を合意的に行うためのツール』ということを強調され、感度・特異度についても新型インフルエンザにまつわる臨床問題で解説されました。
学生さんたちにはEBMというとなんとなくデータをいじくり回して難しいという印象だったようですが、「臨床のための」EBMということがわかると興味が高まったようです。


2つ目は佐賀大学病院・総合診療部の小泉俊三教授による『総合医と家庭医について』。
日野原重明先生による「新老人の会」の紹介から始まりました。日野原先生は99歳ですがいまでも全国を飛び回っておられ、高齢になっても「新しいことをはじめること」をアピールされています。また、僕も初めて知ったのですが、小泉先生は「新老人の会」の佐賀支部長とのことです。

そして日本の総合診療部の歴史から本題に入りました。日本で初めに総合診療部ができた国立大学が佐賀(医科)大学で、私立大学が川崎医科大学です。
総合医も家庭医も「臓器にこだわらず、患者さんの抱える問題に対応する」ことが大きく共通しています。病院総合医(Hospitalist)と家庭医(Family Physician)は、働く場所(総合病院とクリニック)と入院患者の有無、専門医制度がまず大まかに異なります。ただその中間で働いている総合医・家庭医も沢山いて、明確な線引きができないこともあります。
いずれにしても、どちらも今後の日本の医療に絶対必要な存在です。

ここまでで午前の部が終了。

お昼は会場である卒後臨床研修センターの2階でみんなでお弁当を食べました。
佐賀のB級グルメを味わっていただきたかったので「シシリアンライス」です。

午後は、アイスブレイクのグループゲームでスタート。
優勝チームには佐賀銘菓の丸ぼうろを進呈しました。


3つ目のセッションは唐津市民病院きたはたの江口幸士郎先生と西川武彦先生による『腰の診察法』。
お二人の先生はともに家庭医療専門医です。
今回はおもに神経診察についてで、お二人による「診察室コント」から始まり、ステテコ(?)に骨盤、神経、デルマトームを描きこんだ姿の西川先生を使って(笑)解説があり、その後に各自で診察法の実技練習を行いました。
会場には整形外科の先生も参加されていたので、その先生にも指導をしていただきました。
なかなか授業や実習では、じっくり時間をかけて診察法を学ぶ機会がないとのことで、毎回このセッションは学生さんにも好評です。


4つ目は僕が『医療行政超入門~ワクチン行政を中心に~』を行いました。
まず世界と日本の医療の比較で、OCED諸国との比較を行い、日本の急性期病床数やCT・MRIの数などはずば抜けて多いので、医師数はOCED平均の2/3程度であり医師一人ひとりの負担がわかります。また医療費の増加がマスコミなどでも取り上げられますが、GDPに占める社会医療費の割合は、OCEDの平均より低くなっています。
次に日本国内の財政状況と国民医療費、高齢化社会が加速することなどをお話しました。
高齢者は多くの合併症を抱えており、総合医・家庭医による、より総合的な診療が必要になります。今後の超高齢化社会に対応するためにも、もっと多くの総合医・家庭医が必要です。

そして、医療行政を理解するために、ワクチン行政についてお話しました。
日本はワクチン後進国で、残念ながら先進国のなかで最もワクチン政策が遅れています。
世界標準のワクチンプログラムよりも10年以上遅れています。
このワクチンギャップの原因として①米国のACIP(Advisory Committee for Immunization Practices:予防接種諮問委員会)にように国から独立したワクチン専門機関がワクチン行政に関与していなかったこと②ワクチンの有害事象に対する無過失補償制度・免責制度がなく、裁判での敗訴により国がワクチンに対して消極的になったこと③国民に対するワクチンの情報提供不足と予防対象疾患に対するサーベイランスの不足、を挙げました。

 また、地方自治体の取り組みの紹介として幌加内町による6種任意ワクチン(インフルエンザ、Hib、水痘、ムンプス、HPV、小児用肺炎球菌ワクチン)の公費全額助成制度の経緯をお話しました。
医学生にとっては政治や行政というと遠い世界のように感じるかも知れませんが、実は医療に直結しているということを感じてもらえたら、と思います。


最期に佐賀大学5年生の横山さんから「第23回学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナー」の紹介がありました。

さらにそのあとは各参加施設の後期研修プログラムなどの宣伝大会になりました。

飯塚病院総合診療部では、先日よりUstreamで番組「飯塚病院TV」を持たれています。

唐津市民病院きたはたでも後期研修プログラムがスタートします。

もちろん、当講座も総合内科医育成プログラムがございますよ。


そんなこんなで勉強会は大盛況のうちに終了しました。


んで、第2部として希望者による懇親会を大学近くの居酒屋で行いました。
文字通り「ざっくばらん」にいろんな大学や施設の医者と学生が熱く(暑苦しく?)語りあい、またバカ話で笑いました。

毎回、思いますが目を輝かせた学生さんたちと飲むのは僕ら医者も明日への活力になります。

前回からの恒例で飲み会の場で、次回の開催地が決定されました。

次回、第4回の勉強会は
2011年4月23日(土曜)
です!みなさん、予定をあけておいてくださいね。

また、わいわい楽しみながらともに学びましょー

(総合内科 坂西雄太)

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